【徹底レビュー | BMW F20 M135i 】奥様に秘密でドライビングプレジャーを叶えたいお父さんの味方

試乗レビュー

製造年2012-2015
エンジン型式S55B30A
排気量2,979cc
最高出力326ps(240kW)/5800rpm
最大トルク45.9kgm(450Nm)/1350-4500rpm
種類3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
全長 / 全幅 / 全高4340 / 1765 / 1430mm
ホイールベース2690mm
車両重量1560kg
乗車定員4名
新車時価格566万円
  • 奥様に秘密でドライビングプレジャーを叶えたいお父さんの味方
  • 子育てが始まり車1台でベビーカーやチャイルドシートを積んでお買い物にいかなければならない。選択肢はハッチバックかワンボックスカー。
  • しかし、「本当は若い頃のように、スポーツカーや2シーターで走りを楽しみたい」そんなお父さんの最後の砦がこの車
  • 奥さんから許可が出そうな控えめな見た目とハッチバック故の利便性、そして中古が200万円台から買える現実味、それでありながら、M2やM3と肩を並べるBMWらしいコーナリングフィールやエンジンフィールで走りを楽しめる稀有な一台、簡単に言うなら、Mパフォーマンスとは「誰でも毎日使えるM」
  • BMWのアナウンスによると、「Mパフォーマンス」は、サーキットスペックとも言える「Mモデル」と、通常のBMWのトップグレードとの中間に位置づけられるモデルラインで、「比類なきスポーツ性と優れた効率に加え、日常走行における高い実用性を提供する」と説明されているが、まさにそれを体現

加速性能

加速性能が0から100キロメートルまでのタイムは4.9秒となります。これが全てを物語っています。
見た目はブサかわいいハッチバックでありながら、10年前のフェラーリ(360モデナは4.4秒)と同様の加速タイムを発揮するのです。

エンジン性能

『N55B30A』エンジンは、M135が販売される前に販売されていた一世代前のMがつかない130iと同様に3Lのターボエンジンを搭載しています。このエンジンの素晴らしいところは、上記の0→100kmタイムからも分かるように、トルクバンドの広さです。

このエンジンは、超低回転域の1300回転からピークトルクを発生させ、そこから約3000回転にわたってピークトルクを維持し続けます。1300回転というのは、超燃費運転の巡行時の回転域であり、スーパーチャージャーとターボの良いところどりのような感覚があります。ゆっくり走っているところからでも戦闘態勢に切り替えたり、街中で車線変更したいときには、アクセルを少し踏むだけで加速することができます。

最大出力は約320馬力ですが、軽い車重と8速ATと相まって、実際の加速は1990年から2005年頃に販売された4LNAのV8エンジンを搭載した車両の400~500馬力ぐらいの加速感覚を味わうことができます。(もちろん音は異なります)

このような性能の良いエンジンを3Lで実現できるのは、BMWの数々の技術によるものです。具体的には、エンジンへの無段階可変バルブリフト機構「バルブトロニック」、筒内直接噴射「高精度タイレクト・インシェクション・システム」、吸排気無段階可変バルブ・タイミング「ダブルVANOS」などのエンジンテクノロジーを投入し、ターボには「ツインスクロールターボ」技術を組み合わせました。

これらの技術をフル活用することで、ターボラグ中に吸気バルブ閉時期を最適制御することができ、シリンダー内の体積効率が高まってトルクが増加し、レスポンスが向上しているのです!

まさに21世紀のBMWのエンジンは、BMWの努力の結晶と言えますね!

このエンジンは、低回転からフラットなトルク特性を持ちながら、エンジン回転数に応じてしっかりと馬力が向上していくので、退屈にはなりません。

扱いやすさ、速さ、高揚感の三拍子が揃っているのがこのエンジンの素晴らしいところです。(電気自動車や最新の欧州車に多いダウンサイジングターボ搭載車は、下からトルクが一定で実用性に優れている一方、エンジンフィールが一定すぎて燃費や実用性には優れていますが、アグレッシブな走りを楽しみたいユーザーにとっては、無機質に感じられてしまいます。)

余談ですが、給排気とECUチューニングを行うだけで、このエンジンは500馬力を超えるパワーを発揮することができ、かなりのポテンシャルを秘めています。(実際に、同じN55エンジンを搭載したM235iの500馬力仕様に試乗したことがありますが、それはもう半端なく速かった…トルク70kgの自分の車よりも遥かに速く加速した…)

また、この高性能エンジンでありながら、試乗中の実測燃費は約10km/lを超えていました。のんびり高速道路を走行する場合、12km/l程度の実燃費が期待できます。

ミッション性能

F20M135iは、8速のトルコン式ATを採用しています。 M3がDCTを採用していることを考えると、純粋なMと比較すると差別化やコストカットがされているようにも思えますが、個人的には街乗りなどではトルコン式ATのほうがスムーズに発進してくれるため、渋滞でもカクつくことはなく、不満点はありませんでした。 冒頭でお父さんの味方と言ったように、ドライバーが強固な理性を持ってアクセルを制することで、この車は”普通”の車として奥様にスポーツカーとバレずに乗ることができます。

DCTやSMGでは音や振動、発進時のカクツキがあるため、そこはトルコン式がこの車のコンセプトにマッチしていると思います。また、ブレーキングをしながらシフトダウンをしても、一昔前のトルコン式ATでは変速の間が長く、ギアを1速下げることしかできませんでしたが、このトルコン式ATは変速がスムーズで、ブレーキングしながら2段階シフトダウンをすることもできます。アクセルペダル越しにギアを感じる直結感は少ないかもしれませんが、性能的には十分満足できる水準に達しています。

コーナリング性能

M135iのコーナリング性能の限界は非常に高く、120iや118iとは全く違う、M Performance Automobiles(Mパフォーマンス)の名にふさわしい性能に仕上がっています。しっかりとした剛性とBMWらしいリアタイヤの設置感があり、何よりも、コンパクトハッチバックでありながら「FR」の挙動とフィーリングが楽しめるのが最高です。(次の世代からはFFになるため、駆動形式にこだわる方にはこのモデルがおすすめです。)

サスペンション性能

F20の良いところは、リア側のトラクション性能が非常に優れていることです。これはMなどに共通していえることですが、ハッチバックというスペース上の制約が多いボディ形状を考慮すると、かなり優れたサスペンション設計だと言えます。

また、今回のM135iで驚いたのは乗り心地が良かったことです。先代よりもスポーティーな雰囲気は感じるものの、同乗者から不満が出ないようなオブラートに包まれた入力でした。

これはドライバーにとって非常に重要です。ステアリングやシートを通して身体に車からの情報が届かなくなってしまっては、運転ができなくなってしまいます。しかし、情報が多い車というのは乗り心地が悪くなりやすいものです。M135iはそのバランスが非常に良く取れていました。

また、フロント側とリア側のロール量のセッティングが絶妙で、車の前後車重のバランスが50:50ではないにも関わらず、車がロールしたときのバランスは前後が均等にロールしてくれて、コーナーの立ち上がりで素早くアクセルオンが出来るセッティングになっていました。

ダンパーの性能をBILSTEINやKWなどに変えることで、さらなる路面追従性のアップを感じることができましたが、これも足回りの基本設計が優れているからだと強く感じました。

シャシー性能

Mの手が加わっていると感じるのは、エンジンだけではありません。

118iや120iと比較すると、M135iではシャシーの剛性が格段にアップしています。通常のBMWのモデルでは、300馬力オーバーのパワーをしっかりと路面に伝える剛性感が欠けていることが多いのですが、このM135iではしっかりと補強パーツがはいり、フロアの剛性感が増しています。

裏側を覗き込んだわけではないので、憶測に過ぎませんが、ボディとサブフレームの取り付け剛性を上げるために、ブレースや太いボルトの採用などの補強がされているように感じられました。また、前後の剛性バランスも良く、ステアリング操作に対してニュートラルステア寄りの弱アンダーなセッティングとなっています。

BMWはこのあたりの配慮によってアクセルオンでオーバーステアが出ないようにしており、フロント側の剛性を社外製のタワーバーなどで少し上げると、よりフロントのリアの一体感が増したニュートラルステアになると感じられました。

車重

F20 M135iの車重は1560kgとなり、ハッチバックというカテゴリーでは少し重めに感じられるかもしれません。しかしながら、2023年現在では車両重量がどんどん重くなっている中で、ドイツ車らしい剛性感を持つボディに3Lエンジンを搭載した上で1500キロ台という軽快な重さを保っています。ちなみに、2022年に登場したGOLF Rの車重は1600kgです。

さらに、低速トルクが豊富で、大排気量NAエンジンのようなトルク感があります。そのため、加速時に重さを感じることはありません。

ただし、昭和や平成の国産スポーツカーを乗り継いでこられた方には、ノーズの入り方やステアリングの切りはじめの動きにやや重量感を感じるかもしれません

重量配分

車検証によると、前軸重は840Kg、後軸重は700Kg。小さなボディに6気筒エンジンを載せたために、Mの伝統ともいえる50:50の前後重量配分は守れなかったことが、この車唯一の弱点である。

しかし、ワインディングロードを気持ちよく走り、さらに速い。

50:50の前後バランスのメリットを感じるのは、

日常運転領域では、車線変更時のステアリングを切った瞬間にフロントがスッと入り、中心軸が自分(ドライバー)であるかのような独特の感覚

ワインディング領域では、S字カーブを曲がる際の前後荷重の移り変わりと、左右荷重の移り変わりが、官能的で優雅で速い、、、感覚

サーキット領域では、4輪がグリップを超えてからのアクセル操作による車の制御

つまり、何が言いたいかというと、私のような気持ち悪いレベルでの車オタクか、サーキット走行で全開走行を厭わないドライバーでなければ、M135iで性能的には全く問題がないのです!

(注意:50:50を否定しているわけではなく、むしろそんなフィーリングのために全力投球しているBMWの姿勢と開発陣には最大限のリスペクトがあります)この車の完成度は非常に高く、ごく一部のユーザー以外には生粋のMとして楽しめるポテンシャルを秘めています。前後バランス以外に弱点が思いつかなかった。

空力性能

この車は特別な空力性能に特化しているわけではありませんが、フロントグリルの下部のブラックアウトされた部分とホイールハウスが繋がっているため、フロントタイヤハウス内の空気の流れを整流して、高速走行時でも安定したハンドリングを実現しています。また、サーキット走行時にはフロントブレーキの耐フェード性能向上にも貢献しています。

ブレーキ性能

対向ピストン式ブレーキキャリパーを備えた「Mスポーツブレーキ」はとても良い性能でした。

ブレーキのタッチがとてもわかりやすく、安心して踏めるブレーキでした。制動力に関しては、このマニアックな記事を読まれる方はハイグリップタイヤや社外製ブレーキパッドにすぐに交換してしまいそうなので、詳しい言及は避けますが、日常領域~ワインディング領域では十分な性能を感じました。

また、ブレーキバランスもしっかりと考えられており、フルブレーキをしてもフロントに荷重が偏りすぎて、リアタイヤがロックしそうになることはありませんでした。

試乗前に外観を眺めると、フロントには大きなキャリパーがありますが、リアブレーキの外観はいわゆる”普通”の見た目をしていたので、乗る前にブレーキバランスは要チェックしておきたい項目でしたが、この点はさすがBMW、Mパフォーマンスとはいえ”M”の冠をつける以上、しっかりと走りを考えていると感じました。

また、上記で述べるようなブレーキでありながら、踏み白はAudiのAシリーズよりもゆとりがあり、奥様が運転されるときであっても、カックンブレーキにはならないでしょう。日常使いとサーキット走行のバランスの取り方がうまいと感じました。

まとめ

車好きの方、特に運転好きの方にとっては最高の一台であると言えます。特に先述したように、高性能であるだけでなく、奥様からの了承を得やすい価格、利便性、そして佇まいを備えつつ、純粋なドライビングプレジャーを楽しめるという点が魅力的です。

もちろん、よりスパルタンにドライビングに集中するために設計された車もありますが、現実的にお父さんが運転を楽しむために選びやすいという観点から見れば、この車を超えるものはなかなか見つけられません。

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長尾 孟大

長尾 孟大

株式会社Carkichi 代表取締役 。慶應義塾大学卒業後メガベンチャーに就職、プロジェクトマネージャーとして新規事業の立ち上げを行う。 その後、車好きがこうじて「クルマ好きを増やしたい」という思いで独立、その後自動車業界に特化した映像制作やマーケティング支援を行うCarkichiを設立。2020年9月法人化。2023年MBA取得。自動車メディア「旧車王ちゃんねる」「外車王SOKEN」などへ出演、寄稿中。趣味はカート、愛車はE55AMG。いつか手に入れたい車はR35GTR 2013モデル / S2000 / アリエルアトム。

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長尾 孟大

長尾 孟大

株式会社CARKICHI 代表取締役 映像制作、モータースポーツ企画。2020年9月法人化。 自動車メディア「外車王SOKEN」へ寄稿中。Esports World (Powered by AKRacing)にて「eスポーツはアマチュアレーサーの練習になるのか? 『アセットコルサ コンペティツィオーネ』×「K-TAI」で検証してみた」(2021年12月24日付)と題して、掲載される。

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