【徹底レビュー | BMW E46 M3】「直6エンジン」がNAで味わえる最後のモデル

試乗レビュー
製造年2001-2007
エンジン型式S54B32
排気量3246cc
最高出力343ps/7900rpm
最大トルク37.2kg・m/4900rpm
PWR4.52
PWR/FG1.25
GWR 3.23
種類直列6気筒DOHC24バルブ
全長 / 全幅 / 全高4490mm / 1780mm / 1370mm
ホイールベース 2730mm
車両重量1550kg
乗車定員5名

BMW E46 M3の性能について、私が試乗した際の詳しくレビューを書いていきます。

総括

  • BMW E46 M3は、その魅力あるエンジンの気持ちよさとコーナーを曲がる気持ちよさを日本の道路環境でも日常的に味わえる素晴らしい車
  • 大人4人が快適に乗れるセダンとして、日常使いから家族旅行やゴルフといった長距離移動もしっかりこなせる超優秀な車
  • ドイツのエンジン屋、BMWの代名詞とも言える直6エンジンが NAエンジン で味わえる最後のモデルとして、クルマ好きにとってはたまらない魅力を持っている
  • BMW E46 M3は、エンジンの魅力だけでなく、快適性や使い勝手の良さなど、多くの魅力を持った素晴らしい車である

こんな人におすすめ

  • エンジンの気持ちよさを日常で味わいたい人
  • ハンドリングの気持ちよさを交差点でも味わいたい人
  • 高速道路での長距離運転を疲れずに移動したいが、大人しいセダンやSUVでは物足りない人
  • でも、4人乗れる車が欲しい人
  • BMWらしい車を体感したい人

加速性能

エンジンはパワーもさることながら、レスポンスの良さや気持ちよさが、通常のBMWモデルとの一番の差分となっています。また、NAエンジン であるにもかかわらず、低回転域から高回転域まで トルク が分厚く、とにかく扱いやすいという特徴があります。リッターあたり約107psという怒涛のパワーを、きわめて高い回転域である「7900回転」で発生させる名機です。

エンジン性能

S54B32エンジン は、内部抵抗を徹底的に減らし、さらに可変吸気システムであるダブルVANOSを搭載したことによって、自然吸気エンジンでありながら、リッターあたり約107psという怒涛のパワーを発生させることができます。ライバルである後継のE92M3は105PS/L、先代のE36M3はM3B 95PS/L、M3C100PS/Lであり、当時最高クラスであったシビックやインテグラtypeRに搭載されたK20Aで約110PS/Lという記録を出したエンジンに匹敵する出力を持っています。

また、このエンジンの素晴らしいところは、7900回転という高回転において最高出力を出すエンジンでありながらも、約2000回転で最大トルクの約20%を発揮している点です。これは高回転型 NAエンジン において驚異的なことです。つまり、トルクバンドが約6000回転もあり、スポーツ走行を行うときに2000回転を切ることがほとんどないことを想定すると、常にトルクバンドで走行できるということです。これは単純にカタログスペックでの300馬力を発揮している他のエンジンよりも、加速性能において大きく有利になります。

この両立の難しい低回転域から高回転域までを高効率に燃焼させることが可能になりました。

技術がダブルVANOSであり、先代のE36M3の前期では吸気側のカムシャフトのバルブタイミングを可変にするシングルVANOSが採用されていましたが、E46M3では排気側の空気量を調整することで、排気抵抗を効率的に活用することに成功しています。

実際に、E36型のM3は高回転まで元気に回る気持ちの良いエンジンである一方で、停止状態からの加速性能については劣る傾向があります。これに関しては、低回転域のトルクが大きく影響していることが原因です。(加えて後述するE46は6速ギア、E36は5速ギアの違いも大きいです。)

ミッション性能

E46のミッションは大きく分けて2種類あり、MTとセミATと呼ばれるSMGがあります。(SMGについてのレビュー記事は追って作成します。)どちらも6速があり、これはE36の5速と比較して加速性能に対して大きなアドバンテージとなっています。

また、BMWの個性を感じられる点が、ギア比にあります。E46の通常モデルでは、ギア比1.00が5速であるのに対して、M3では6速を1.00とすることで、燃費性能や巡航時のノイズ低減よりも加速性能を重視している点が特徴的です。また、MercedesのAMGも6速は巡航用のギア比にしており、細かいところに両メーカーの価値観や顧客層が顕著に現れています。

コーナリング性能

サスペンション

E46M3のサスペンションは、特殊なダンパー構造であり、ダンパー内部にスプリングが収められています。

また、BMWのサスペンションにおける特徴は、ダンパーに限られるものではありません。例えば、フロントのサスペンション形式はストラット形式であることも挙げられます。これだけ聞くとダブルウイッシュボーンではないかと落胆する方もいるかもしれませんが、M3に用いられているストラットは十分な剛性があり、ストラット形式でも十分な性能を発揮できるという点が特徴的です。

ストラット形式であることのメリットは、足回りをダブルウイッシュボーンに比べて、ダンパー部分に高負荷がかかるため、段差や路面のうねりによって様々な方向からの入力がかかっても、サスペンションがよれることが少なくなり、理想的なダンパーのストロークを生み出せることにあります。

さらに、BMWのサスペンションセッティングの特徴は、高負荷状態になりボディが撚れても、ダンパーの減衰力のセッティングがボディの縒れに合わせてストロークするようになっている点です。これは、BMWのセッティングの巧妙さの肝と言えます。

このセッティングは理論上の計算でのみ実現可能なものではなく、ニュルブルクリンクという高負荷な環境において試作品を試して煮詰めあげる実践的な研究開発工程が必要です。そのため、BMWのサスペンションには、高い性能と耐久性が求められていることがわかります。

シャシー性能

BMWの回頭性の良さは、ボディ剛性バランスの最適化によるものです。絶対的なボディ剛性においては、Mercedes-BenzやAudi、Porscheといったドイツメーカーのほうが優れていることが多いですが、BMWは軽量なシャシー設計により、運動性能を高めています。

BMWはリアの剛性よりもフロントの剛性を高めることで、ステアリング操作に対して俊敏な動きを実現しています。一方、Mercedes-Benzではリア側の剛性を高めることで、安定性を重視したセッティングを実現しています。このあたりは、両メーカーの価値観の違いが表れています。

BMWは軽量ボディを作るために、ボディ補強を多用しています。特にM3には、下周りにサブフレームとボディを締結するブレースを加えたり、エンジンルームにストラットタワーバーを加えたりすることで、走行性能に必要な箇所の剛性を効率的に上げる方法を採用しています。また、CSLなどでは軽量化にも余念がありません。

車重

今回は割愛します。

重量配分

M3のもう一つの魅力は、理想的な49:51の前後重量配分を実現していることです。このような理想的な重量配分を、4人乗りの車で実現し、大人4人が快適に乗れる車種は非常に少ないです。

また、トランスアクスルレイアウトを採用している車や2シーターが多いなかで、しっかり大人4人が乗れるパッケージでこの重量配分を実現したのが、このM3の凄い所だと言えます。この重量配分を実現するためには、エンジンをフロントミッドシップに搭載している直6エンジンを採用し、エンジン全体をフロント車軸の内側に収めています。これはBMWの執念によるものでしょう。日常で味わえる効果としては、コーナーを曲がる際のステアリングの切り始めにおいて、ノーズの入りがとても軽快になることが挙げられます。

サーキットで使える効果としては、限界領域での安定性が高くなります。4輪のタイヤの限界付近や限界を超えた状態でも、余計なアンダーステアが出ないことや、アクセルの加減によるピッチングでアンダーとオーバーを繊細に操ることが可能になります。そのため、腕に自信があるドライバーにとっては、限界領域でのコントロール性が高い車となります。

ちなみに重量バランスが良い車の代表例として、S2000はエンジン全長が短い直4エンジンを採用しています。RX7は軽量かつ小型のロータリーエンジンを採用しており、R35GTRは重たいV6エンジンを採用するかわりに、ミッションを後方に配置するトランスアクスルレイアウトを採用することで、それぞれ理想的な重量バランスを実現しています。

空力性能

この車両は空力特性に対して特質する点がないため割愛します。

ブレーキ性能

制動力

このマニアック記事を読みたい人はパッドやタイヤなどをアフターパーツに変更し制動力をあげるとおもうので制動力は割愛します。

ただし、後ほど詳細に記載しますが、ブレーキバランスがよくフルブレーキ時も4輪全てが地面に設置するために、制動力はパッドサイズに対して高い制動力を果たせるポテンシャルがあるとおもいます。

ブレーキタッチ

大型のブレーキは搭載されていないものの、十分なブレーキフィールがあり、タイヤの状態なども比較的わかりやすいです。また、BMWらしい味付けで、ブレーキペダルを踏む踏力に対してもリニアに反応してくれるため、コントロールしやすく扱いやすいです(純正車種の中では)。

一方で、AMGなどはブレーキキャリパーを高級にしても、ブレーキマスターシリンダーバックなどが動いてしまうためか、ブレーキペダルの機構が普通のベンツと同様のため、遊びが多くてコントロールしにくいことがあります。しかし、M3のブレーキは扱いやすいという点では優れています。

ブレーキバランス

前後のブレーキバランスが良く、4輪が沈み込む扱いやすいブレーキが実現されています。この点は、ブレーキバランスと共に車両の前後バランスの素性の良さや、リアサスペンションの高い設置感も反映しており、ブレーキだけでは実現しにくい、ブレーキの扱いやすさが特徴的です。

最後に

BMW E46 M3は、エンジンやハンドリング、そして乗り心地など、多くの魅力を持った素晴らしい車です。日常の街乗りから高速道路での長距離移動まで、あらゆるシーンで魅力を発揮するこの車は、BMWらしいスポーティな走りと上質な乗り心地を兼ね備えた、まさにドイツのエンジニアリングの粋を集めた逸品といえるでしょう。

ワオクルで中古車サービスの購入相談をしてみませんか?

ワオクルは、お客さまのご希望の中古車を店頭販売価格よりもリーズナブルな価格で提供します。
どの車種にするべきか迷っている方にも、累計200車以上試乗するコンシェルジュが納得の一台に出会うまでをサポートします。

私たちは、車を選ぶことがワクワクする体験であるべきだと考えています。そのため、在庫や店舗を持たないことで、お客様により手頃な価格で質の高い車を提供しています。また、車の実物を購入前に見ることができなくても、お客様の好みやライフスタイルに合わせて、最適な車を見つけるお手伝いをしています。

長尾 孟大

長尾 孟大

株式会社Carkichi 代表取締役 。慶應義塾大学卒業後メガベンチャーに就職、プロジェクトマネージャーとして新規事業の立ち上げを行う。 その後、車好きがこうじて「クルマ好きを増やしたい」という思いで独立、その後自動車業界に特化した映像制作やマーケティング支援を行うCarkichiを設立。2020年9月法人化。2023年MBA取得。自動車メディア「旧車王ちゃんねる」「外車王SOKEN」などへ出演、寄稿中。趣味はカート、愛車はE55AMG。いつか手に入れたい車はR35GTR 2013モデル / S2000 / アリエルアトム。

関連記事

特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

長尾 孟大

長尾 孟大

株式会社CARKICHI 代表取締役 映像制作、モータースポーツ企画。2020年9月法人化。 自動車メディア「外車王SOKEN」へ寄稿中。Esports World (Powered by AKRacing)にて「eスポーツはアマチュアレーサーの練習になるのか? 『アセットコルサ コンペティツィオーネ』×「K-TAI」で検証してみた」(2021年12月24日付)と題して、掲載される。

最近の記事

  1. 【徹底レビュー|新型プリウス 60系】プリウスはどうやってスポーツカーに生まれ変わったのか?超マニアック目線で考察してみた

  2. 【徹底レビュー|BMW E63 M6】V10を積んだ究極の駆け抜ける喜び

  3. 【徹底レビュー|BMW E36 M3(M3B)】クーペ×高性能を民主化させた一台

TOP