【徹底レビュー | BMW F83 M4カブリオレコンペティション】ドライバーあらゆる欲を満たす一台

試乗レビュー

総評

  • ドライバーあらゆる欲を満たす一台
  • 爽快感を味わえるオープンモデルでありながら、ボディ剛性やエンジンの面でも不満点が全くない稀有なモデル。
  • 風を浴びる気持ちよさ、コーナーを曲がる気持ちよさを一台で味わえる。
  • グランドツアラーでありながら、BMWらしいスパルタンな走りも両立できる万能選手
製造年2001-2007
エンジン型式S55B30A
排気量2,979cc
最高出力450ps/rpm
最大トルクNm/rpm
PWR4.18
PWR / FG1.21
GWR3.42
種類V8DOHC8連スロットル
全長 / 全幅 / 全高4685mm / 1870mm / 1390mm
ホイールベース2810mm
車両重量1880kg
乗車定員4名

動力性能

前のモデル(E92)まではNAエンジンでしたが、ターボ化によりパワーアップが大幅に進みました。馬力は約130馬力アップ、トルクは約15キロのアップを果たしています。さらに、カブリオレには7速DCTミッションが採用されており、エンジンのパワーアップとギアの多段化によるクロスミッション化により、E92型のクーペよりも鋭い加速が可能になっています。また、これらの大きなパワーを後輪のみで受け止めているにもかかわらず、(カブリオレの中では)ボディ剛性がかなり高く、トラクションがしっかりとかかり、パワーロスが少ないという魅力的な点があります。

エンジン性能

S55B30A型エンジンは、先代モデルに比べて大きなパワーアップを果たしています。M4カブリオレではエンジンマッピングが異なるため、出力特性が異なりますが、ベースとなっているS55B30Aエンジンには、1850rpmというターボ車には苦手な超低回転域から、中高回転域である5500rpmという約4000回転という超広い回転域で56.1kgmものトルクを繰り出す能力があります。

また、最高出力は7300rpmで431psというピークパワーを発生する高回転高出力型のエンジンです。 このエンジンの特徴は、ボアストローク比が1.066というロングストローク型であることです。基本的にストロークが長くなるほど、エンジン内部の回転系パーツに負荷がかかるため、高回転型エンジンにするのが難しいとされていますが、S55B30Aは鍛造クランクシャフトや軽量ピストンに加え、吸排気のバルブタイミングを連続的に可変させるダブルVANOSやバルブトロニックなどの採用によって、これらの課題を克服しています。

そのため、ECUチューニングをするだけで500馬力を超えるパワーを出すこともでき、3Lエンジンでありながらかなりのポテンシャルを秘めています。

実際にM4カブリオレコンペティションを運転した感覚としては、あくまで主観ですが、どこからでも加速するエンジンお化けという印象を受けました。
大げさに言えば、まるで電気自動車のようにすぐにトルクが立ち上がり、若干のターボラグはあるものの、現在の電子スロットルでガチガチにアクセルレスポンスが悪化させられている車に慣れている人であれば、ターボラグを感じない程度(さすがに言い過ぎかもしれません)にレスポンスが良いです。また、トルクは一定ですが、エンジンの出力自体は回転数に伴って7000回転までキレイに吹け上がりながらパワーがついてくるので、電気自動車にはない高揚感を味わうことができます。
スポーツ+モードにすると、電子スロットルの介入も減り、レスポンスが鋭くなります。運転に慣れていない人はスロットルの踏み加減の調整が難しいかもしれませんが、このレスポンスの良さから、BMWがM3やM4にターボエンジンを積むにあたって、できる限りNAの気持ちよさを残したかったという想いが強く感じられました。
また、これだけのエンジンでありながら、燃費も約12km/lとお財布にも地球にも優しいです。

ミッション性能

7速DCTミッションであるM DCT Drivelogicを搭載していますが、このミッションは個人的にとても好きです。 SMGやSMG2では程度に差があれど、街中で渋滞にはまったときにミッションのギクシャク感が気になったり、傾斜のある道路での発進時はクラッチが削れるような音と振動が精神的によくかった印象があります。

特にSMGの初代ではブレーキングしながら2段シフトダウンといった激しいシフトダウンをすると、ギアがしっかりと合わずに、荷重移動が丁寧に出来ずサーキット走行には向かなかったと思います。 しかしながら、このDCTはしっかりとシフトダウン時にエンジンの回転数をあわせてくれますし、シフトチェンジも速いです。人間よりも機械がやったほうが速いし正確だし良いなというふうに思えるクオリティでした。

また街中での低速発進もトルコンATほどなめらかではありませんが、車好きでなければ気が付かないような滑らかな発進をしてくれて、BMWという日常使いからサーキットまで一台で楽しめる万能選手としてのクオリティが一段と増したように感じました。

コーナリング性能

F83カブリオレのコーナリングフィールはとても良いです!

いままでのカブリオレに乗っていると、どうしてもボディ剛性が欠ける印象が目立ってしまい、ワインディングを飛ばす気にはならず、ゆっくりと景色を眺めて風を浴びながらコーナーを気持ちよく曲がっていくというような使い方でしたが、この車に乗ったときはカブリオレの車で初めてコーナーをしっかりと曲がりたいという衝動に駆られました。オープンカーとしてゆっくり走ることも、ワインディングをハイスピードで楽しむ事もできる万能選手です!

サスペンション性能

この車両のサスペンションは、アダプティブ M サスペンションという電子制御サスペンションです。モード切替によって、紳士的な街乗りから高速巡航まで、幅広い走行シーンに対応できます。このレビューでは、アウトバーンでの走行にフォーカスした評価を行いたいと思います。

この車両の特徴は、リア側のトラクション性能が非常に高い点です。サスペンションの設置感が非常に高いため、コーナーでのアクセル操作も安心して行うことができます。この高いトラクション性能は、アダプティブ M サスペンションがホイールの動きと路面状況をセンサーで感知し、ダンパーの減衰力を瞬時に電子制御していることによるものです。

また、フロントとリアのロール量のバランスが良く、ステアリング操作に対してリアタイヤが素直に反応するため、狙い通りのコースを走行することができます。さらに、左右のリアタイヤのトラクション配分をコンピュータが電子制御するアクティブ M ディファレンシャルの効果も大きく、段差があるコーナー出口でもトラクションがかかり、車が前に進む感覚を得ることができます。

ただ、唯一の欠点は、ハードトップ仕様であるため、オープンにした場合にリアヘビーな状態になることです。この状態でも安定して走行できるよう、リア側のサスペンションの減衰圧は調整されていますが、バネの硬さには不足感があります。それでも、カブリオレとしては、リア側のトラクション性能が高く、安心してアクセルを踏むことができる足回りとなっています。

これらが達成された背景として、BMWのリアサスペンションはマルチリンク式を採用することが多いですが、他社のマルチリンク式のサスペンションと比べてアームが長く、レバー比によって細かい凹凸などをしっかりと拾って路面への設置を向上させる効果があると推測されます。

シャシー性能

この車の凄いところはシャシーにあります。 オープンカー用にシャシーを専用設計していないカブリオレは一般的に運動性能においては、クーペやセダンに対して、ボディ剛性において圧倒的なアドバンテージを負っています。 しかしながら、このモデルはクーペと比較するとボディ剛性で劣るのですが、それであってもカブリオレとしてはかなり優秀なボディ剛性を確保しています。 そのため歴代BMWのカブリオレでは、シャシーとサブフレームの結合があまかったりと、ボディのフロントとリアが別々に動いてしまうという、走る上では大きな欠点があったのですが、それが克服されています。

車重

F82(クーペモデル)は、CFRPや軽量アルミパーツを多用することで先代E92に比べて軽量化に成功しています。これらは現代の車がどんどん重くなっている中、素晴らしいことだと感じます。
しかし、カブリオレであるため、ボディ補強パーツを多用する必要があり、1880kgと重量がかなり重くなってしまいました。具体的にはクーペに比べて240kgの重量増となっています。
そのため、コーナー中は車の動きが軽快なのですが、コーナーの後半では重量によってロール量が大きくなってしまったり、遠心力が強く働くため、F82ほどの素性の良さは感じさせません。
特にルーフの重さが増しているため、全高が低く、トレッド幅が広い車でありながら、重心位置が高いように感じました。

重量配分

M3やM4の魅力は50:50という理想的な前後重量配分を実現していることですが、カブリオレではこの50:50の重量配分は達成できません。 ただ、マニアックな車好きには1つ朗報があります。それは、クローズド時は素性の良いコーナリングマシンとして楽しめること、そしてオープン時にはハードトップの重量が全て後輪側にかかるため、リア側の重量が一気に増加し、911のような雰囲気のドライビングフィールも楽しめることです。個人的には、一台で二台分のドライビングプレジャーを味わうことができ、とても楽しいと感じました。

空力性能

この車両は空力特性に対して特質する点がないため割愛します。

ブレーキ性能

brembo製の大型キャリパーはとてもタッチが良く、制動力も向上していると感じましたが、E92に比べて車重が増えてしまったカブリオレではやや物足りない感じがしました。街乗りや法定速度での使用には十分ですが、サーキット走行などで強い制動力を必要とする場合は不足するかもしれません。

また、ブレーキバランスに関しては強い制動力を発揮するとリア側の制動力不足を感じることがありました。これは、カブリオレの車体がクーペに比べて重くなったことで、後軸側に重量が偏っているためだと思われます。また、カブリオレの中間セクションのボディ剛性が不足しているため、フルブレーキをかけた際にフロントとリアの一体感が欠け、姿勢が乱れる可能性があると感じました。(サーキット走行時に限る)

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長尾 孟大

長尾 孟大

株式会社Carkichi 代表取締役 。慶應義塾大学卒業後メガベンチャーに就職、プロジェクトマネージャーとして新規事業の立ち上げを行う。 その後、車好きがこうじて「クルマ好きを増やしたい」という思いで独立、その後自動車業界に特化した映像制作やマーケティング支援を行うCarkichiを設立。2020年9月法人化。2023年MBA取得。自動車メディア「旧車王ちゃんねる」「外車王SOKEN」などへ出演、寄稿中。趣味はカート、愛車はE55AMG。いつか手に入れたい車はR35GTR 2013モデル / S2000 / アリエルアトム。

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長尾 孟大

長尾 孟大

株式会社CARKICHI 代表取締役 映像制作、モータースポーツ企画。2020年9月法人化。 自動車メディア「外車王SOKEN」へ寄稿中。Esports World (Powered by AKRacing)にて「eスポーツはアマチュアレーサーの練習になるのか? 『アセットコルサ コンペティツィオーネ』×「K-TAI」で検証してみた」(2021年12月24日付)と題して、掲載される。

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